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道楽百景 その70:アルバム聴こうぜ
新アルバム「Feel」の制作が佳境だ。
「アルバム出ます!」 と言いながら、まだ完成してないんかい。
いや、ほぼ出来ているのです。
自分達で出来る範囲のことは終わっていて、今はみんなの耳に届くまでの最後のプロセス——ミキシング〜マスタリング——に取り掛かっているところだ。
通常、この作業はデータのやり取りで進めることが専らだ。 一回目のミックスが終わった楽曲を聴いて、僕達が要望を伝え、後日その修正ver.が届き、またそれに要望を……といったラリーで完成まで持っていく。
ところが、我々の作品の多くを一緒に手がけてきたレコーディング・エンジニア、トシさんはひと味違う。 絶対に「立ち会い」の上でミックスチェックを行うのだ。
何故かというと、データでのチェックができないから。 逆に言えば、データでチェックができるのは、PC上でデジタル編集をするからこそ「保存」が可能だからだ。 僕らの場合は、PCだけで完結させず、様々なアナログ機材を通す。その瞬間の回路の響きは保存がきかない。つまり、「その場」でしか再現できない音なのだ。
これ伝わってる?何言ってるかわからん人は調べてみて欲しい。(詳細は省くけど、これがもう本当に手の込んだプロセスなのです)
一曲あたり6-8時間のミックス作業がかかり、僕らはその仕上がりの3時間ほどに立ち会う。 これは、僕らメンバーだけが味わうことのできる至福の時間だ。
もうこの瞬間のために音楽作ってる、まである。
こじんまりしたアトリエでポロンと爪弾いたギター。 その上に乗っかったメロディが、WATARUやメンバーそれぞれのアレンジによって音楽になる。 その音がぼんやりとした情景やワンシーンをぽつぽつと浮かび上がらせ、やがて歌詞になり、頼りなかったメロディが確かな物語を歌い始める。
それがミックスによって、様々なコントラストや、自分達でも気づかなかった煌めきを放つようになる。 すると、世界がより増幅されて目前に迫ってくるような、8k映像のような息を呑む画素数で、花の咲く様を目の当たりにしたような……そういう凄まじい迫力が音楽から浴びせられる。
他人を通してじゃないと自分のことがわからないみたいに、曲も自分たちの手だけでは花開かないところがあるのが面白い。
小さな部屋で生まれた音楽のカケラに眠っていた世界が、一気に花開く姿を耳を澄まして聴くあの時間。 それが僕にとって、人生最高の音楽鑑賞だと思っている。
と、同時にこのプロセスの中で、僕と楽曲の関係にある種の「別れ」が訪れる。 子供が独り立ちして、巣立っていくような感覚に近いのかもしれない。
ある部分ではFIVE NEW OLDのものであって、またある部分ではそうでない。 そこからは、リスナーとの関係が育まれていく。
むしろそっちの方が、どんどん大きくなっていくんだろう。
それでいいし、そうであって欲しい。
まぁ、そんなこんなで作ったアルバムを、みんなと一緒に聴く「リスニング・パーティー」を用意しました。 一人で待ち望んだ新譜を聴く瞬間だって最高だし、今回みたいに同じ空間で「初めて」を分かち合うのだっていいもんだ。 さっき話したような、楽曲が花開く瞬間の僕らの感覚に近いものを、みんなにも味わってもらえたらいいなと思う。
当日は登壇して色々話したりすると思うんだけど、正直あんまりベラベラとは話したくない。
だって「Feel(感じろ)」って言ってるし。
まぁ、話すんだけど。
と言うことで来る人はぜひ、楽しんでってください。
前回書いた「人生の第3幕」だけど、すでに入った感が半端ない。 なんかもう「人生いぃー!」って感じで、人生そのものが押し寄せてきている、最近。 大変な時こそ、機嫌良くやりたい。
ほな、また。
